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自分で全てを決めるのが怖い?副業・フリーランスの「自律・自走」に伴うメンタル不安を乗り越える

Tags: 副業, フリーランス, メンタルヘルス, 意思決定, 自律, 不安

会社員から副業・フリーランスへ:新しい働き方で直面する「自分で決める」という壁

会社員として働いていると、多くの場面で「誰かからの指示」や「組織のルール」に従って行動することが一般的です。もちろん、自分の判断が求められる場面もありますが、多くの場合、最終的な決定権は上司や組織にあり、責任も分散されています。

しかし、副業やフリーランスという働き方を選択すると、状況は一変します。仕事の獲得から、内容の決定、進め方、納期、価格設定、果ては経理処理やトラブル対応まで、その全てを自分で判断し、行動する必要があります。この「自分で全てを決め、その結果に全責任を負う」という環境の変化は、多くの人が想像する以上に大きなメンタル負荷となり得ます。

特に、現在の働き方に疑問を感じ、新しい一歩を踏み出そうとしている会社員の方の中には、「自分で本当にやっていけるだろうか」「全てを自分で決めなければならないプレッシャーに耐えられるだろうか」といった漠然とした、あるいは具体的な不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、副業・フリーランスの「自律・自走」という働き方に伴うメンタル課題に焦点を当て、なぜそれが不安を引き起こすのか、そしてその不安とどう向き合い、乗り越えていくための心構えや具体的な方法について解説します。

なぜ「自分で全てを決める」ことが不安なのか?

会社員時代の働き方に慣れている私たちにとって、「自分で全てを決める」という状況が不安を引き起こすのは、いくつかの理由があります。

1.「正解」が見えにくい環境

会社員の場合、プロジェクトの進め方や業務のやり方には、ある程度の「正解」や「ベストプラクティス」が組織内に存在します。上司や先輩に相談すれば、経験に基づいたアドバイスや指示が得られます。しかし、副業・フリーランスの世界には、個々の案件や状況に応じた唯一無二の「正解」は存在しません。自分で情報を集め、複数の選択肢の中から「現時点で最も可能性が高い」と思えるものを判断し、実行する必要があります。この「正解がない中での判断」が、大きな不安を生み出します。

2.失敗への恐れと全責任

会社員時代に何か失敗しても、多くの場合、組織がリスクを吸収したり、チームでカバーしたりすることが可能です。しかし、副業・フリーランスでは、自分の判断ミスが直接、収入の減少やクライアントからの信頼失墜、ひいては廃業に直結する可能性があります。この「失敗した場合の責任を全て自分で負わなければならない」というプレッシャーは、意思決定の場面で私たちを立ち止まらせることがあります。

3.判断材料の不足と孤独

会社員であれば、社内の情報共有システムや同僚とのコミュニケーションを通じて、意思決定に必要な情報を比較的容易に入手できます。また、判断に迷った時には気軽に相談できる相手がいます。一方、副業・フリーランスは、情報収集から分析まで全て自分で行う必要があり、また、事業に関する深い悩みや判断の迷いを気軽に相談できる相手がいないことも少なくありません。情報不足と孤独感も、「自分で決める」ことの不安を増幅させます。

「自分で決める」不安を乗り越えるための心構えと具体的なステップ

こうした「自分で全てを決める」ことへの不安は、副業・フリーランスとして自律・自走していく上で避けては通れない壁です。しかし、適切な心構えと具体的なアプローチによって、この不安を軽減し、乗り越えていくことは十分に可能です。

1.完璧な「正解」を求めないマインドセット

まず重要なのは、「常に完璧な正解を見つけなければならない」という考えを手放すことです。副業・フリーランスの世界では、その時々で最善と思われる判断を下し、結果を謙虚に受け止め、次に活かすことの方がはるかに重要です。最初から完璧を目指すのではなく、「現時点で可能な最善」を目指す、という柔軟なマインドセットを持ちましょう。失敗を恐れず、そこから学びを得る姿勢が、次のより良い判断につながります。

2.「小さく試す」ことから始める

いきなり大きな決断を下すのが怖い場合は、リスクの小さい「小さく試す」ことから始めましょう。例えば、新しいサービスを始める前にモニターを募集してみる、価格設定に迷ったら期間限定で試験的な価格で提供してみる、といった方法です。小さく試すことで、実際の反応を見ながら改善を重ねることができ、大きな失敗のリスクを減らすことができます。副業から始めることは、まさに「小さく試す」ための絶好の機会と言えます。

3.自分なりの「判断基準・軸」を持つ

何においても他人の意見や外部の情報に流されず、自分なりの判断基準や価値観を持つことが大切です。自分が副業・フリーランスとして何を最も大切にしたいのか(例:収入、自由な時間、やりがい、社会貢献など)、譲れない条件は何かを明確にしておきましょう。迷った時には、この「自分軸」に立ち返って考えることで、ブレない判断ができるようになります。

4.情報収集と分析の習慣を身につける

勘や感覚に頼るだけでなく、客観的な情報に基づいて判断する習慣を身につけましょう。市場の動向、競合の状況、クライアントのニーズなど、判断に必要な情報を効率的に収集し、分析するスキルは自律・自走する上で不可欠です。ただし、情報過多に陥らないよう、目的に応じて必要な情報を見極めることが重要です。

5.信頼できる「相談相手」を見つける

孤独な環境で一人で悩み、判断するのは精神的に大きな負担となります。同じように副業・フリーランスとして活動している仲間や、信頼できるメンター、あるいはビジネスに理解のある友人など、気軽に相談できるネットワークを築くことが非常に有効です。客観的な意見を聞くことで、自分だけでは気づけなかった視点を得られたり、判断の背中を押してもらえたりすることがあります。

6.休息とリフレッシュの重要性を理解する

疲労やストレスは、判断力を鈍らせ、ネガティブな思考に陥りやすくします。質の高い意思決定を行うためには、心身のコンディションを整えることが不可欠です。意識的に休息を取り、趣味やリフレッシュの時間を確保しましょう。「休むことも仕事のうち」と捉え、自分のメンテナンスを怠らないようにしましょう。

「自分で決める」ことは成長のチャンス

「自分で全てを決める」という状況は、確かに大きな不安を伴います。しかし、それは同時に、会社員時代には得られなかった大きな成長の機会でもあります。一つ一つの判断を通して、私たちは自分の強みや弱み、得意なことや苦手なことを知り、市場や顧客のリアルな反応を学びます。そして、成功も失敗も含めた全ての経験が、次に活かせる貴重な財産となっていきます。

副業やフリーランスという新しい働き方は、あなた自身が「事業の責任者」となることを意味します。その責任の重さに気後れすることもあるかもしれませんが、それはあなた自身がキャリアや人生の主導権を握る、ということでもあります。

不安を感じるのは自然なことです。その不安を無視するのではなく、その正体を知り、適切な心構えと具体的な行動をもって向き合うことが、新しい働き方で心をすり減らさずに前に進むための鍵となります。一歩ずつ、「自分で決める」経験を積み重ねていくことで、きっと自信を持って自律・自走できるようになるはずです。