会社という名の”目標コンパス”を失ったら?副業・フリーランスが自分だけの成功基準を見つけ、メンタルを保つ方法
会社員として働いていると、多かれ少なかれ会社が定めた目標や評価基準、役割分担といった「フレームワーク」の中で業務を進めることが一般的です。売上目標、プロジェクトの締め切り、上司や同僚からのフィードバック、昇給・昇進といった外部からの評価は、自分の立ち位置を確認し、次に何を目指すべきかを定める上で重要な「コンパス」の役割を果たします。
しかし、副業やフリーランスという新しい働き方へ一歩踏み出すと、この慣れ親しんだコンパスが突然効かなくなるように感じることがあります。明確な指示や評価制度はなくなり、目標設定から自己管理、そして自身の働き方や成果の評価まで、全てを自分自身で行う必要が出てきます。
この「会社という名の目標コンパス」を失った状況で、「何を目指せばいいのか」「自分のやっていることは正しいのか」「これで本当に大丈夫なのか」といった漠然とした不安に襲われ、メンタル的に不安定になってしまう方は少なくありません。
本記事では、このような副業・フリーランスが直面しやすい、目標設定や自己評価の難しさに伴うメンタル課題に焦点を当て、自分らしい成功基準を見つけ、心を保つための具体的な方法や心構えについてお話しします。
会社員のフレームワーク消失がもたらすメンタル課題
なぜ、会社というフレームワークがなくなると、私たちは不安を感じやすいのでしょうか。それは、以下の要因が複合的に影響していると考えられます。
- 目標設定・計画立案の経験不足: 会社では組織やチームの目標があり、個人の目標はそれに紐づく形で設定されることが多く、ゼロから自分で大きな目標を立てる経験が少ない場合があります。
- 外部評価への依存: 会社員は、上司や同僚、評価制度を通じて外部から評価される機会が多く、自身の価値や進捗を測る基準を外部に委ねがちです。この外部からの評価がなくなると、自己肯定感が揺らぎやすくなります。
- 「正解」が見えにくい環境: 副業・フリーランスの仕事には、会社のように明確な「正解」や「定められたプロセス」がない場面が多く、全て自分で判断し、責任を負う必要があります。この「自分で決める」ことの連続が大きな精神的負荷となることがあります。
- 成果の不安定さと遅延: 努力がすぐに目に見える成果に繋がるとは限らず、収入の波も伴います。安定した評価や報酬が得られない状況は、モチベーションの維持や不安の増大に繋がります。
これらの要因が組み合わさることで、「自分は何をやっているんだろう」「このまま続けていて大丈夫だろうか」といった迷いや焦りが生じ、時には自己否定に陥ってしまうこともあります。
自分だけの「成功基準」を見つける
会社という外部のコンパスがなくなった今、必要なのは「自分だけのコンパス」を持つことです。これは、他人の基準や世間の「フリーランス像」に囚われず、自分自身が何を大切にし、どのような状態を「成功」とするのかを再定義することから始まります。
収入や案件の規模だけが成功ではありません。例えば、以下のような要素も、あなたの成功基準となり得ます。
- 得られる経験やスキル: 新しい分野への挑戦、特定のスキルの習得。
- 働き方の柔軟性: 時間や場所にとらわれずに働けること。
- 人間関係: 信頼できるクライアントや仲間との出会い。
- 社会への貢献: 自分の仕事が誰かの役に立っているという実感。
- 自己成長: 困難を乗り越え、新たな課題に挑戦する過程。
- 精神的な安定: 穏やかに、ストレス少なく働けること。
- プライベートの充実: 家族との時間、趣味、休息の確保。
これらの要素の中から、今のあなたが最も大切にしたいものは何か、どのような状態であれば「満たされている」と感じられるのかをじっくり考えてみてください。紙に書き出したり、マインドマップを使ったりするのも有効です。これにより、漠然とした不安が、「〇〇を達成するために△△をしよう」という具体的な行動目標に繋がりやすくなります。
小さな目標を設定し、達成感を積み重ねる
大きな成功基準が見えてきたら、それを達成するための具体的な「小さな目標」を設定しましょう。会社員時代の大きなプロジェクトとは異なり、副業・フリーランスでは日々の小さな行動一つ一つが成果に繋がります。
例えば、「今週中に〇〇に関する情報収集をする」「来週までに△△のタスクを完了させる」「今月中にクライアント候補に3件アプローチする」など、短期間で達成可能で、かつ具体的な行動目標を設定します。
そして、その目標を達成したら、必ず自分で自分を褒めましょう。「〇〇ができた!」「予定通りに進められた!」といった、小さな成功体験を積み重ねることが、外部からの評価がない状況での自己肯定感を育む上で非常に重要です。達成リストを作ってチェックをつけたり、自分にご褒美をあげたりするのも良い方法です。
外部評価に依存しない「自己評価」の仕組み作り
会社という組織の評価システムがないからこそ、自分で自分を適切に評価する仕組みを持つことが不可欠です。
- 定期的な振り返り: 1日の終わりに、1週間の終わりに、1ヶ月の終わりに、自分が何に取り組み、何を達成し、何から学んだのかを振り返る時間を持ちましょう。日記やノートに書き出すことで、客観的に自分の進捗や成長を把握できます。
- プロセスを評価する: 結果だけでなく、そこに至るまでのプロセス(努力、工夫、学んだこと)も評価対象としましょう。たとえ結果が伴わなくても、プロセスを肯定することで、次の挑戦への意欲が湧きます。
- 信頼できる第三者の意見を聞く: メンターや同業者、信頼できる友人などに、率直な意見やフィードバックを求めることも有効です。ただし、その意見に一喜一憂せず、あくまで自己評価を補完する情報として捉えるバランス感覚が大切です。
- 「失敗」を学びと捉える: 計画通りにいかなかったことや、期待した成果が出なかったことも、「失敗」として否定的に捉えるのではなく、「次に活かせる学びが得られた」と建設的に捉え直しましょう。何がうまくいかなかったのか、どうすれば改善できるのかを分析することが、自己成長に繋がります。
まとめ:自分自身の「羅針盤」を持つこと
副業やフリーランスという働き方は、自由であると同時に、これまで会社が提供してくれていた多くの「当たり前」がなくなる世界でもあります。特に、目標設定や自己評価といったメンタルに関わる部分は、自分で意識的に仕組みを作る必要があります。
会社という外部のコンパスに頼るのではなく、自分自身の価値観に基づいた「成功基準」という名の羅針盤を持ち、小さな目標達成で自己肯定感を育み、定期的な自己評価で進むべき道を確認していくことが、新しい働き方で心を健やかに保つ鍵となります。
不安を感じることは決してネガティブなことではありません。それは、あなたが自分自身の働き方や人生について真剣に考えている証拠です。その不安と向き合い、自分なりの解決策を見つけていく過程こそが、副業・フリーランスとしての確固たる基盤と、揺るぎない自己肯定感を築く力となるはずです。
この記事が、あなたが自分だけの「成功基準」を見つけ、副業・フリーランスとして前向きに、そして穏やかに働くための一助となれば幸いです。