会社員とは違う？副業・フリーランスの目標設定・達成に伴うメンタル課題と乗り越え方
会社員から副業・フリーランスへ：目標設定という新たな壁
会社員として働いていると、良くも悪くも組織から目標が与えられ、その達成度で評価されることが一般的です。しかし、副業やフリーランスという働き方を選ぶと、自分で何を目標とし、どう進めていくのかを決めなければなりません。この「自分で決める」という自由には、同時に大きな責任と、それに伴うメンタルの課題が潜んでいます。
特に、これから副業を始めたい、あるいはフリーランスとして独立したいと考えている会社員の方の中には、
- 何を目標にすれば良いか分からない
- 目標を設定しても、達成できなかったらどうしよう
- 頑張っているのに、成果が見えなくて焦る
- 目標と現実のギャップに心が折れそうになる
といった不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、副業・フリーランスという働き方における目標設定・達成にまつわるメンタル課題に焦点を当て、なぜそれが難しく感じられるのか、そして、どうすれば健やかにそのプロセスと向き合えるのかについて考えていきます。
なぜ、自分で目標を立て、達成するのが難しく感じられるのか？
会社員から個人として働くことに移行すると、目標設定や評価に関する環境が大きく変化します。この変化が、メンタルに負荷をかける要因となり得ます。
1. 外部からの明確な指示や評価軸の消失
会社では、部署や個人の目標が明確に提示され、進捗や成果に対するフィードバックや評価も比較的定期的です。しかし、個人で働く場合、誰かが明確な目標やタスクを与えてくれるわけではありません。自分で「何を」「いつまでに」「どこまで」やるのかを決め、その進捗や成果を自分で評価する必要があります。この自由度の高さが、逆に「正解がない」ように感じられ、不安につながることがあります。
2. 成果がすぐに出るとは限らない現実
新しい分野での挑戦や、事業を立ち上げる場合、努力が必ずしもすぐに目に見える成果（収入や評判など）に結びつくとは限りません。会社員時代の「やればやっただけ評価される」「期末には昇給や昇進がある」といったサイクルがないため、「これで合っているのだろうか」「無駄な努力なのではないか」という疑念が生じやすくなります。
3. 進捗の可視化の難しさ
一人で黙々と作業していると、自分の進捗が客観的に見えにくくなります。会社であれば、チーム内での情報共有や上司への報告を通じて、ある程度自分の立ち位置や進捗を確認できますが、個人では意識的に記録したり、誰かに話したりしない限り、曖昧になりがちです。進捗が見えないことは、停滞感や焦燥感、そして「本当に目標に近づいているのか？」という不安につながります。
4. 理想と現実のギャップ
副業やフリーランスの輝かしい側面だけを見て期待を膨らませていると、いざ自分で目標を設定し、厳しい現実に直面した際に、そのギャップに打ちのめされやすくなります。「こんなはずじゃなかった」「自分には才能がないのかもしれない」と自己否定に陥る危険性もあります。
目標設定のメンタルブロックを外す考え方
これらの課題に対し、どのように向き合っていけば良いのでしょうか。まずは、目標設定そのものに対する考え方を見直してみましょう。
1. 「完璧」ではなく「暫定的」と捉える
最初から完璧な目標を設定しようと気負う必要はありません。特に始めたばかりの頃は、何が上手くいくか、何が現実的なのかが見えにくいものです。「これはあくまで現時点での暫定的な目標だ」と捉え、必要に応じて柔軟に見直す姿勢を持ちましょう。走りながら考える、軌道修正することを前提にする、くらいの気持ちで大丈夫です。
2. 結果だけでなく「プロセス」に焦点を当てる目標も
収入〇〇円達成！のような「結果目標」だけでなく、「新しいスキルを学ぶために毎日30分勉強する」「週に1回、異業種交流会に参加する」といった「行動目標」も設定してみましょう。行動目標は自分でコントロールしやすく、達成感を積み重ねやすいため、結果がすぐに出ない時期のメンタルを支える助けになります。
3. 多角的な視点で目標を設定する
仕事の成果だけでなく、学習、健康、人間関係、プライベートなど、人生全体を見渡して目標を設定することも大切です。仕事の目標達成が難しい時期でも、他の分野で充実感を得られれば、メンタルバランスを保ちやすくなります。仕事の目標も、売上だけでなく「質の高いサービスを提供できたか」「新しいことに挑戦できたか」など、様々な側面から捉え直すことができます。
目標達成できない時のメンタルケア・立て直し方
目標を設定したとしても、常に順調に進むわけではありません。停滞したり、失敗したりした時に、どう心を立て直すかが非常に重要です。
1. 自分を責めすぎない
目標達成できなかった時に、「自分がダメだからだ」と過度に自分を責める必要はありません。目標が非現実的だったのかもしれない、予測できなかった外部要因があったのかもしれない、単純にやり方が合っていなかったのかもしれない。様々な要因が考えられます。課題を分析することは必要ですが、人格否定にまでつなげないように注意しましょう。「目標達成は失敗したが、そこから何を学べたか？」という視点を持つことが大切です。
2. 小さな進捗を意識的に記録・評価する
「〇〇を達成する」という大きな目標だけでなく、そこに至るまでの小さなステップ（例: 関連書籍を1冊読む、Webサイトのトップページだけ作る、顧客に連絡してみる）を設定し、それを達成するたびに記録・評価しましょう。タスクリストにチェックを入れる、日報をつける、進捗ノートをつけるなど、方法は問いません。目に見える形で「できていること」を積み重ねることで、モチベーションの維持や自己肯定感の向上につながります。
3. 目標を柔軟に見直す勇気を持つ
状況の変化や、目標達成が著しく困難だと分かった場合、固執せずに目標を見直すことも時には必要です。これは「諦める」ことではなく、「現実的な道を選ぶ」ことです。市場の変化、自分のスキルレベル、体調など、様々な要因を考慮し、より現実的で、かつ自分が情熱を持てる目標に調整する勇気を持ちましょう。
4. 第三者（仲間、メンター）に相談する
一人で抱え込まず、信頼できる友人、家族、同じような働き方をしている仲間、あるいはメンターに相談してみましょう。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になりますし、客観的な意見や異なる視点を得られることもあります。具体的なアドバイスは得られなくても、「一人じゃない」と感じるだけで大きな支えになります。
5. 意識的に休息を取り入れる
目標達成に集中しすぎると、心身ともに疲弊してしまうことがあります。疲れている時は、物事をネガティブに捉えがちになり、目標達成の困難さがより重く感じられます。意識的に休息を取り、リフレッシュする時間を作りましょう。休息も「目標達成のための重要なプロセス」と捉えることが大切です。
行動に移すためのヒント
これらの考え方を実践に移すための具体的なヒントをいくつかご紹介します。
- 目標設定ツールを活用する: 手帳、カレンダー、タスク管理アプリ（Trello, Asanaなど）、ノートアプリ（Evernote, Notionなど）を活用し、目標やタスクを書き出して整理しましょう。視覚化することで、やるべきことが明確になり、進捗も管理しやすくなります。
- 定期的な「ふりかえり」の時間を設ける: 1週間、1ヶ月、3ヶ月など、定期的に時間を取って、設定した目標に対する進捗や、その期間に「できたこと」「学んだこと」「課題」などを振り返りましょう。このふりかえりの時間で、目標の調整や、今後の行動計画を立てます。成果が出ていないように感じていても、振り返ることで意外な成長や小さな成功に気づくことがあります。
- 目標達成以外の「成功体験」にも目を向ける: 新しい人と知り合えた、新しいスキルを少しだけ習得した、健康のために運動を続けられた、など、目標達成に直接関係しなくても、自分が「できた」と感じられること、成長を実感できることに意識的に目を向けましょう。これらの小さな成功体験が、困難な時期のメンタルを支えてくれます。
まとめ
副業・フリーランスという働き方において、自分で目標を設定し、達成していくプロセスは、会社員時代とは異なるメンタル課題を伴います。外部からの指示がない不安、成果が見えにくい焦り、理想と現実のギャップなど、様々な困難に直面するかもしれません。
しかし、これらの課題は、あなただけが抱えているものではありません。多くの副業・フリーランスが経験する道です。完璧を目指さず、柔軟な目標設定を心がけ、結果だけでなくプロセスや多角的な視点での成果にも目を向けましょう。そして、困難な時は自分を責めすぎず、小さな進捗を喜び、時には目標を見直し、誰かに相談するなど、自分自身のメンタルケアを最優先に考えてください。
自分で目標を立て、それに向かって進む経験は、たとえ失敗があったとしても、必ずあなたの血となり肉となります。この新しい働き方における目標設定は、単なるタスク管理ではなく、自分自身の可能性と向き合い、成長していくための尊いプロセスなのです。