「好き」だけでは続かない?副業・フリーランスが「やりたいこと」と「稼ぐ」の板挟みで心をすり減らさない方法
会社員から副業・フリーランスへ:理想と現実のギャップに直面する「やりがい」と「お金」の悩み
現在の働き方に疑問を感じ、副業やフリーランスという新しい働き方に興味をお持ちの会社員の方々は多いでしょう。「自分のスキルを活かしたい」「好きなことで稼ぎたい」といった希望を持って一歩を踏み出す方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際に新しい働き方を始めると、理想と現実のギャップに直面し、特にメンタル面で大きな課題にぶつかることがあります。
その中でも、「自分が本当にやりたいこと」と「現実的に稼ぐこと」のバランスに悩む声はよく聞かれます。好きな仕事を選びたいのに、収入のために興味のない案件を受けなければならない。情熱を注ぎたいプロジェクトがあるのに、生活のために短納期で稼げる仕事を優先してしまう。このような「やりたいこと」と「稼ぐこと」の板挟みは、知らず知らずのうちに心をすり減らし、副業やフリーランスで働くことへのモチベーションを低下させてしまうことがあります。
この記事では、副業・フリーランスがなぜこの「やりたいこと」と「稼ぐこと」の板挟みに陥りやすいのかを掘り下げ、それがメンタルに与える影響について解説します。そして、心が折れないように、この二つのバランスを上手に取りながら活動を続けていくための具体的な心構えや対処法についてご紹介します。
なぜ「やりたいこと」と「稼ぐこと」は衝突しやすいのか?
会社員として働いていると、多くの場合、会社の事業目標や売上目標という明確な「稼ぐ」ための指標が存在します。個人の業務は、その大きな目標の一部として位置づけられ、組織としての役割分担の中で専門性を追求しやすい環境があるかもしれません。
一方、副業やフリーランスは、良くも悪くも「個人事業主」です。自分の活動が直接的に収入に繋がるため、「稼ぐ」という側面がより切実に、個人的な課題として目の前に現れます。
この構造的な違いに加え、以下のような要因が「やりたいこと」と「稼ぐこと」の衝突を生み出しやすくなります。
1. 経済的な不安定さへの不安
会社員のような固定給がなく、収入が不安定になりやすい副業・フリーランスにとって、経済的な不安は常に付きまといます。「今月はいくら稼げるのだろうか」「来月仕事があるだろうか」といった不安は、精神的な余裕を奪い、多少興味がなくても「稼げる」案件に飛びつかざるを得ない状況を生み出します。
2. クライアントの要求とのすり合わせ
自分の「やりたいこと」や得意な分野で仕事を受注したいと思っていても、実際に依頼される案件は、クライアントのニーズや予算、納期によって左右されます。必ずしも自分の理想通りの仕事ばかりが来るわけではなく、稼ぐためにはクライアントの要求に応じた仕事を受け入れる必要が出てきます。
3. 自分のスキルや価値の「市場価格」とのギャップ
「やりたいこと」でどれだけ情熱を注いでいても、それが市場でどれだけの価値と評価されるかは別の問題です。特に経験が浅い段階では、「やりたいこと」だけでは十分な収入を得られない現実があり、収益を確保するために、あまり得意ではない、あるいは「やりがい」を感じにくい仕事も引き受ける必要が出てきます。
4. 自己成長への焦り
新しい分野に挑戦したり、スキルアップを図ったりすることは、「やりたいこと」を追求する上で重要です。しかし、これらの活動はすぐに収入に繋がるとは限りません。自己投資と収益化のバランスが崩れると、「稼げていないのに、やりたいことばかりやっている」という焦りが生じ、メンタルに負担をかけます。
「板挟み」がメンタルに与える影響
「やりたいこと」と「稼ぐこと」の板挟みは、以下のようなメンタル課題を引き起こす可能性があります。
- モチベーションの低下: 好きで始めたはずなのに、稼ぐための仕事に追われることで、当初の情熱が薄れてしまいます。「何のためにこの仕事をしているのだろう」という疑問が生じ、やる気が湧かなくなります。
- 自己肯定感の低下: 「やりたいことができていない」「稼ぐためだけの仕事しかできていない」と感じることで、自分の活動や価値に対する肯定感が失われていきます。自分が本当にやりたいことを実現できない無力感や、お金のために妥協している自分への嫌悪感を抱くこともあります。
- 疲弊とバーンアウト: 興味のない仕事や、心身の負担が大きい仕事も引き受け続けることで、心身ともに疲弊しやすくなります。結果として、燃え尽き症候群(バーンアウト)に繋がるリスクも高まります。
- 将来への不安の増大: このまま「やりたいこと」が実現できずに「稼ぐ」ためだけの活動になってしまうのではないか、という将来への漠然とした不安が大きくなります。
心をすり減らさないためのバランスの取り方
では、この「やりたいこと」と「稼ぐこと」の板挟みを乗り越え、メンタルを守りながら活動を続けるためにはどうすれば良いのでしょうか。いくつかの具体的な心構えと対処法をご紹介します。
1. 自分の「やりたいこと」を再定義・細分化する
漠然と「やりたいこと」と考えているだけでは、現実の仕事とどう繋がるかが見えにくくなります。まずは、なぜそれを「やりたい」のか、活動を通じてどのような状態を目指したいのか、どのような価値を提供したいのか、といった目的や価値観を明確にしましょう。
また、「やりたいこと」を構成する要素を細分化することも有効です。例えば、「〇〇という分野で働きたい」というだけでなく、「その分野の△△の技術を使いこなしたい」「□□のような課題を持つ人を助けたい」など、具体的な活動内容や貢献対象まで掘り下げてみてください。これにより、「稼ぐための仕事」の中にも、一部でも「やりたいこと」に繋がる要素を見つけやすくなることがあります。
2. 「稼ぐための仕事」を戦略的に捉える
完全に自分の「やりたいこと」だけの仕事で安定した収入を得るのは、多くの人にとって時間がかかる道のりです。現状では「稼ぐための仕事」も必要だと割り切り、それらの仕事をどう位置づけるかを戦略的に考えましょう。
- 練習の機会として捉える: たとえ興味のない分野の仕事でも、新しいツールや技術を学べる、コミュニケーション能力が向上する、といった学びの機会として捉えることで、単なる「お金のため」以上の意味を見出すことができます。
- 「やりたいこと」のための資金源とする: 「この仕事で得た収入を、将来『やりたいこと』に繋がる自己投資(学習、ツール購入など)に使う」と明確に決めることで、モチベーションを維持しやすくなります。
- 効率化を追求する: 「稼ぐための仕事」は、できるだけ効率的に終わらせる工夫をしましょう。定型的なタスクは自動化ツールを活用したり、自分にしかできない部分以外は外注を検討したりすることも視野に入れられます。
3. 「やりたいこと」と「稼ぐこと」の比率を意識的に設定する
理想は「やりたいこと=稼ぐこと」ですが、現実的には段階的にその状態に近づいていく必要があります。現状のスキル、経済状況、将来の目標などを考慮し、「今月は『やりたいこと』に繋がる活動に〇割、収入を確保するための仕事に△割の時間を割こう」といったように、意識的に時間の配分や案件の選定を行います。この比率は固定ではなく、状況に応じて柔軟に見直していくことが重要です。
4. 経済的な安定基盤を作る努力
心の余裕は、経済的な安定にある程度左右されます。すぐに収入が増えなくても、無駄遣いを減らす、緊急時のための貯蓄をする、複数の収入源を確保するといった努力は、心の安定に繋がり、「稼ぐ」ことへの過度なプレッシャーを軽減します。
5. 休息とリフレッシュを確保する
「やりたいこと」も「稼ぐこと」も、どちらもエネルギーを使います。特に「やりたいこと」は好きだからこそ、つい時間を忘れて没頭してしまいがちですが、心身の健康を損なっては元も子もありません。意識的に休息の時間を設け、趣味や運動など、仕事とは全く関係のない活動でリフレッシュする時間を持つことが重要です。
6. 完璧を目指さず、「できたこと」に目を向ける
「やりたいこと」を完璧に実現できない自分、「稼ぐ」ために妥協している自分を責めるのではなく、今の状況で「できたこと」に目を向けましょう。「この案件で新しいスキルを少し学べた」「今月は目標の〇割を稼げた」といった小さな成功体験を積み重ねることが、自己肯定感を保つ上で大切です。
7. 相談相手やコミュニティの活用
一人で悩みを抱え込まず、信頼できる友人や家族、あるいは同じように副業やフリーランスとして活動している仲間と話す機会を持ちましょう。自分の状況を客観的に見てもらうことで、新しい視点が得られたり、精神的な支えになったりします。オンライン・オフラインのコミュニティに参加してみるのも良いでしょう。
まとめ:しなやかなバランスで、あなたらしい働き方を
副業やフリーランスという働き方は、大きな自由と同時に、これまで会社が担っていた様々な機能(収入保証、目標設定、評価、所属意識など)を自分で担うことになります。特に「やりたいこと」と「稼ぐこと」のバランスは、多くの人が直面するメンタル課題の一つです。
この課題を乗り越えるためには、理想論だけでなく、現実的な視点を持つことが重要です。「稼ぐための仕事」を単なる我慢の対象とするのではなく、自己投資の機会や目標達成のためのステップとして捉え直すこと、そして意識的に「やりたいこと」と「稼ぐこと」のバランスを調整していくことが、心をすり減らさずに活動を続ける鍵となります。
完璧なバランスは存在しないかもしれません。状況に応じて揺れ動くのが自然なことです。大切なのは、その揺れに一喜一憂しすぎず、自分にとって心地よい、持続可能なバランスはどこにあるのかを常に問い直し、しなやかに調整していく姿勢です。
あなたらしいペースで、あなたの「やりたい」と「稼ぐ」を両立させていく一歩を、この記事が後押しできれば幸いです。