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会社員から副業・フリーランスへ:外部評価に頼れない環境で、どう自己肯定感を育むか

Tags: 自己肯定感, メンタルヘルス, 副業, フリーランス, 自己評価

副業やフリーランスという働き方に興味を持ち、新しい一歩を踏み出そうと考えている会社員の方は多いでしょう。会社組織という安定した環境から離れることには、多くの期待と同時に、様々な不安が伴います。特に、これまでの働き方で当たり前だった「外部からの評価」が得られなくなることへの戸惑いや、それに伴う自己肯定感の揺らぎは、多くの方が直面するメンタル課題の一つです。

会社員であれば、給与や役職、昇進、上司からの評価、同僚からの承認など、自身の仕事ぶりや価値を測る明確な指標が少なからず存在します。しかし、副業やフリーランスになると、そうした定まった評価軸はなくなります。クライアントからのフィードバックはありますが、それはプロジェクト単位であったり、時に厳しかったり、あるいは全くなかったりもします。「自分は今、どのくらいのレベルにいるのだろう?」「本当に価値のある仕事ができているのだろうか?」といった疑問が湧き上がり、自己評価が不安定になりがちです。

この状態が続くと、漠然とした不安や焦りを感じたり、他人(他の副業・フリーランス)と比較して落ち込んだり、最悪の場合、「自分にはこの働き方は向いていないのではないか」と自信を失ってしまうこともあります。では、外部評価に頼れない環境で、どのように心の安定を保ち、自己肯定感を育んでいけば良いのでしょうか。

会社員時代の「評価軸」が失われたことで生じるメンタル課題

会社員としての働き方では、良くも悪くも組織の評価システムに自分が組み込まれています。この評価は、あなたのスキルや貢献に対する報酬や承認という形で示され、多くの人にとって自己価値を確認する一つの拠り所となります。

副業やフリーランスになると、この拠り所がなくなります。成果に対する報酬は直接的になりますが、それはあくまで契約に基づいた対価であり、会社員時代の昇進や表彰のような包括的な承認とは性質が異なります。また、組織内にいた時には自然に得られていた同僚からの何気ない承認や共感も得にくくなります。

これにより、以下のようなメンタル課題が生じやすくなります。

これらの課題は、副業・フリーランスという働き方の「影」の部分であり、多くの人が経験する自然な感情です。重要なのは、これらの感情を否定するのではなく、その存在を認め、適切に対処していくことです。

新たな自己評価軸を構築し、自己肯定感を育む方法

外部からの評価に頼れない環境で心の安定を保つためには、自分自身の中に新たな「自己評価軸」を構築することが不可欠です。これは、誰かの基準ではなく、あなた自身の価値観に基づいた、より内的な評価基準です。

具体的な方法として、以下の点が挙げられます。

1. 成果だけでなく「プロセス」や「学び」を評価する

フリーランスの仕事は、必ずしも常に大きな成果が出るとは限りません。契約が成立しなかったり、プロジェクトが途中で頓挫したりすることもあります。そのような時でも、「今回の経験から何を学べたか」「次はどう改善できるか」といったプロセスや学び自体に価値を見出すようにしましょう。

結果だけでなく、目標に向かって努力した過程や、そこで得た知識・スキルを評価することで、一時的な失敗に心を折られにくくなります。

2. 過去の自分と比較する

他人と比較するのではなく、過去の自分自身と比較することに重点を置きます。

「1ヶ月前の自分より、〇〇のスキルが少し上がった」「半年前にはできなかった〇〇ができるようになった」「最初の頃より、クライアントとのコミュニケーションがスムーズになった」

このように、自身の成長に目を向けることで、着実に前に進んでいる実感を得られ、それが自己肯定感につながります。定期的に(週に一度など)自己振り返りの時間を設けることをお勧めします。

3. クライアントからのフィードバックを積極的に求める・記録する

クライアントからの感謝の言葉やポジティブなフィードバックは、あなたの仕事が価値を提供できていることの直接的な証拠です。これらを恥ずかしがらずに積極的に求め、記録しておきましょう。

厳しいフィードバックを受けた場合も、人格否定と捉えるのではなく、サービスの改善点として受け止め、「次に活かす」という視点を持つことが大切です。

4. 自身の「行動目標」を設定し、達成を評価する

売上目標だけでなく、「週に〇件新しいクライアントに営業をかける」「毎日〇時間スキルアップのために学習する」「ブログを週に〇回更新する」といった具体的な行動目標を設定します。

これらの行動目標は、自分の意思でコントロールしやすいものです。目標を達成できたかどうかで自分を評価することで、「やればできる」という自信を積み重ねることができます。

5. 自身の「得意なこと」「好きなこと」を再認識する

会社員時代の評価は、必ずしもあなたの真の強みや情熱に基づいているとは限りません。副業やフリーランスの働き方を通じて、「自分が本当に得意なこと」「心から楽しいと思えること」を再認識し、そこに価値を見出すことも重要です。

自分の強みを活かせているという実感は、何よりもの自己肯定感の源泉となります。

6. 休息を取り、自分を労わる時間を作る

自己評価が不安定な時は、つい働きすぎてしまったり、休息を取ることに罪悪感を感じたりしがちです。しかし、心身が疲弊している状態では、健全な自己評価はできません。

意識的に休息を取り、好きなことをする時間や、何も考えずにリラックスする時間を作りましょう。「休むことも、長く働き続けるためには必要なことだ」と自分自身に許可を与え、労わることで、自分自身の存在そのものに価値があることを再確認できます。

7. 信頼できる仲間やメンターを見つける

完全に一人で抱え込まず、同じような働き方をしている仲間や、経験豊富なメンターに相談することも有効です。自分の悩みや不安を言葉にすることで整理できたり、他の人の経験談からヒントを得られたりします。また、理解してくれる存在がいるだけで、孤独感が軽減され、精神的な支えになります。

まとめ:自分だけの羅針盤を持つこと

副業やフリーランスとして、外部評価に頼らず自己肯定感を育むということは、自分自身の中に確固たる羅針盤を持つようなものです。それは、他人の基準や社会の常識に左右されず、あなた自身の価値観や目標に基づいて進む方向を定める力になります。

この羅針盤は、すぐに完成するものではありません。試行錯誤しながら、少しずつ磨き上げていくものです。時には不安に襲われたり、立ち止まりたくなったりすることもあるでしょう。しかし、その都度、今回ご紹介したような自己評価の方法や心構えを思い出し、自分自身の内面に目を向ける時間を持つことが大切です。

新しい働き方への挑戦は、自身の内面と深く向き合う旅でもあります。外部の評価に一喜一憂するのではなく、自分自身が納得できる価値基準を見つけ、あなたらしいペースで自己肯定感を育んでいってください。その過程こそが、あなたを唯一無二の存在として輝かせてくれるはずです。